今から約3年半前、2020年12月16日に等々力で引退セレモニーを行いました。

当時はコロナ禍でしたが、本当に多くの方に来ていただきました。自分の辿ってきた18年をみなさんに見守られながら、こんなに幸せな終わり方ができて自分は本当に幸せ者だと思い、2021年元旦天皇杯決勝をもって現役引退をしました。

正直な話をすると、あれだけ盛大に送ってもらった上に、40歳までプレーをしたこともあり、引退試合を行うという発想は全くありませんでした。
その発想が覆り、引退試合への想いが芽生えたのは、昨年Jリーグで声出しが解禁になり、等々力で自分のチャントを歌ってもらった時でした。

思えば等々力で行われた現役最後のリーグ戦（20年11月）や引退セレモニー、現役ラストマッチ・天皇杯決勝も入場が制限され、みんながマスクをして声出しは禁止されていました。
引退した後、色々な現場や場所で会う人会う人に「あの時、チャントを歌って送り出したかった」と言ってもらいました。そのたびに、「申し訳ないな、でもコロナ禍だったししょうがなかった」と思い過ごしてきました。

チャントを歌ってもらったあの日、自分がチャントの中でプレーをし続けてきた18年間が鮮明に甦り、心が震えたと同時に、抑えていた想いが溢れ出しました。

僕はプロサッカー選手としても人としても川崎に育ててもらいました。
想いが芽生えた時、来年に川崎市が市制100周年を迎えることは、現役時代から市制記念試合をしていたので把握していました。お世話になった川崎市が迎える市制100周年という大切な節目に、少しでも花を添えることができたらなと思いました。

今回の引退試合が、サポーターのみなさんにとってあの日できなかった全力でチャントを歌い、全力で応援する一日にしてほしいと思いますし、みんなで川崎市制100周年を盛り上げ、楽しい時間を過ごし、笑顔になってもらえたならば、応援してくださったみなさんへの恩返しという意味でもこれ以上幸せなことはありません。

改めまして引退して4年経ったにもかかわらず、引退試合開催を快く許可してくれた福田市長はじめ川崎市のみなさま、共に盛り上げてくださるスポンサーのみなさま、関係各所のみなさま、共に出場してくださる元選手、現役選手のみなさまに厚く御礼申し上げます。

そうそう、憲剛はこういう選手だったね。
そう思ってもらえるように全力でプレーしたいと思います。

12月14日、みなさんと共に等々力を、川崎市を盛大に盛り上げたいと思いますので、是非とも等々力に足を運んでください。等々力でお会いしましょう。

中村 憲剛